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「有事の円買い」は何処へ
過去何年もの間、戦争や自然災害など有事においては日本円が買われる、所謂「有事の円買い」が常識でしたが、ここ最近はこれが通じなくなっています。
つまり、今まで有事の際に、安全資産と見なされた日本円が買われることにより円高になっていたのが、そういう流れになっていない、むしろ円安になっているのです。
そもそも為替レートは何で決まる?
円が買われると円高、売られると円安になると言いますが、そもそも為替レートは何で決まるのでしょうか。
国力を表わす
元々為替レートは、対する通貨国との国力を表わすと言われてきました。
日本国が弱くなると円安に、強くなると円高になるということです。
とすると、日本の国力は弱くなっていくと言われているので、円安になることが予想されます。
しかし、もう長い間予想通りにはいっていません。国力って何?という話ですが、なんとなく日本の国力が弱くなっていると随分前から言われているにもかかわらず、一方的に円安方向に向かっているかといえばそうでもありません。
購買力平価
また、購買力平価によって長期的な為替レートが決まるとも言われてきました。
二国の通貨で同じものを買う時のそれぞれの価格が為替レートだということです。例えばビッグマックをアメリカでは5ドル、日本では500円で買えるとしたら、1ドルが100円という具合です。
しかし、実際には為替市場での需給や貿易の際のコストなど様々な要因が関わってくるためそう単純ではありません。
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ズバリ為替は金利差で決まる
現在の為替レート決定の要因は、2国間の金融政策で決まると言ってほぼ間違いありません。
そしてその金融政策とは、金利かマネタリーベースでみるので、2国間のこの金利差とマネタリーベース比との関係を確認すればいいのです。
とりわけ誰にでもすぐわかる数値の金利差については、下記チャートからも10年国債の利回り差と為替レートの動きはかなり一致しています。
※出所:J.P.Morgan ASSET MANAGEMENT
そういう意味では、実は為替は非常に読みやすいのかもしれません。
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日本自体がリスクある国になった
円が買われなくなったのは、国力、金利差等の他、大きな要因として日本円が安全資産ではなくなったから、もっと言うと日本自体が安全ではなくなったからです。
安全でないと言われる要因
地政学リスク
極東アジアに位置する日本は、南に中国、台湾問題、西に北朝鮮問題、北にロシア問題とある意味リスクだらけです。
以前からそうだったといえばそうですが、最近その度合いが格段に上がっています。
最悪の事態はあり得ないと高を括っているのは甘いです。もはや何が起きてもおかしくない時代に突入しています。
人口減少リスク
高確率で起きるリスクの筆頭が人口減少リスクです。
日本では現在も日々人口減少が続いており、そのスピードも加速しており、2055年には1億人を切ると言われていますが、恐らくもっと早まるでしょう。
ほぼ確実に到来するこの問題に対して、無策なまま指を咥えて見ている国の政治に危機感を感じます。
人口の減少はそのまま国力の低下に繋がります。
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所得減少リスク
「所得は普通上がるもの」という常識を覆した日本。
世界的にも珍しいこの現象は、所得が上がらないだけでなく、むしろ下がっているという嘘のような事実になっています。
2020年の日本人の平均賃金は、約450万円でOECD加盟国35カ国中22位と平均の約560万円を大きく下回っています。
国は企業に賃金を上げるよう要請していますが、ほぼ無視されています。
物価上昇リスク
賃金が上がるのが常識なら物価も上がるのが常識です。逆に賃金が下がるなら物価も下がります。
ただ、日本は食料や資源をはじめ多くのモノを海外からの調達に依存しており、両方が上がる海外から今まで通りの価格で仕入れることはできません。
つまり、日本がどうであろうが物価は上がっていくのです。
賃金が上がらずに物価だけが上がっていくのです。
自然災害リスク
日本全体がいつ起きるかわからない地震、巨大化する台風のリスクに晒されています。
気候変動の影響もあり、もはや日本で安全な場所はありません。
常に危険と同居しています。
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今後も円安傾向か
アメリカは金利をどんどん上げている一方、日本は引き続き低金利政策を貫いています。
ということは、金利差がますます開き、金利の高い米ドルを買って日本円を売る動きは続くのではないでしょうか。
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